スポンサーリンク

「日本推理小説の曲り角」十返肇

「日本推理小説の曲り角」

 それは、まずあの「私は今なお二十年前に起った怪奇とも不思議とも形容しがたい、あの戦慄すべき事件を思いだすと……」式なハッタリ・プロローグの廃止から始まった。こういう言葉は、冒頭いきなり読者を、作品の世界へ誘導するために書かれていたのだが、今日の読者は、かえって、こういう書きだしには、「またか」という反撥こそ感じても、もはや魅力をおぼえなくなってきている。これは、あきらかに前時代の米英探偵小説の古典からの模倣であって、まったくの通俗小説ならともかく、多少とも知的であろうとする小説を求める読者には、もはや往年の魔力をもっていないのである。

十返肇による「日本推理小説の曲り角」の一節です。

なぞり書きシートの改変・再配布はご遠慮下さい。
個人で楽しむ範囲でご利用ください。

『私は今なお二十年前に起った怪奇とも不思議とも形容しがたい、あの戦慄すべき事件を思いだすと……』
という文章がありきたり過ぎると言うけれど。

今となっては一周まわって
「おぉ、来た、来た。これぞミステリ!」
とばかりに最初のページからワクワクが止まらない。私の場合。

タイトルとURLをコピーしました