「世に出るまで」坂口安吾

世に出るまで

かえりみれば、私の一生は実にもう貧乏また貧乏の連続で、その貧乏たるや、抱腹絶倒ものであったのである。三日も否応なく絶食して水をのんで暮すようなことは時々あったが、手前が好んでもとめることだから仕方がない。深刻な顔をして悲しむような筋合の貧乏ではなく、手前勝手にのんだくれての貧乏であるから、仕方がない。

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この文章のポイント

貧乏を「抱腹絶倒」と言えるそのセンスが好きです。

でも、ちょっと思うのです。
それは後になったから言えることであって、その貧乏の最中にあった時でも「抱腹絶倒」と笑い飛ばせるだけの気概があったのかどうか、と。

成功した「今」から振り返る過去は、様々なきらめきに彩られがちです。

🖋️色彩雫 松露

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