文豪なぞり書き

「田舎教師」田山花袋

田舎教師  清三は一々花の名を手帳につけた。――みつまた、たびらこ、じごくのかまのふた、ほとけのざ、すずめのえんどう、からすのえんどう、のみのふすま、すみれ、たちつぼすみれ、さんしきすみれ、げんげ、たんぽぽ、いぬがらし、こけりんどう、はこべ...
文豪なぞり書き

「甘話休題」古川緑波

甘話休題  森永のキャラメルは、今のように紙製の箱に入ってはいず、ブリキ製の薄い缶に入っていたと覚えている。そして、キャラメルそのものも、今の如く、ミルク・キャラメルの飴色一色ではなく、チョコレート色や、オレンジ色のなど、いろいろ詰め合せに...
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「草枕」夏目漱石

草枕  山路を登りながら、こう考えた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。...
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「食道楽 秋の巻」村井弦斎

食道楽 秋の巻 今の世の有様で見ると家庭の幸不幸は全く運任せです。男女ともお互に未知の人と結婚して運が好ければ幸福を享ける、運が悪ければ不幸を招く。運の外に何の頼みとする所はありません。それならば男女の交際法を開いてお互に選択させたらばどう...
文豪なぞり書き

「梅にうぐいす」北大路魯山人

梅にうぐいす  女のひとはいくつですかと聞かれると、大ていホホホと笑う。いいお天気ですね、といってもホホホと笑う。そんなに楽しいかというとそうではない。楽しくなくとも笑うものらしい。 北大路魯山人の「梅にうぐいす」の一節です。
文豪なぞり書き

「清涼飲料」古川緑波

清涼飲料  金線サイダーも、リボンシトロンも、子供の頃からよく飲んだ。が、やっぱり一番勢力のあったのは、三ツ矢サイダーだろう。 矢が三つ、ぶっ違いになっている画のマークは、それに似たニセものが、多く出来たほどだった。 その頃、洋食屋でも、料...
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「図書館」宮本百合子

図書館 女の友情と云えば、たよりないものであったのも、つまりは婦人が社会人として無力であったからであった。経済的能力もないし、はっきりした職業の上の立場もないし、友達にたよられれば共にゆらつく生存の足場しかもたなかった。女子の専門学校や大学...
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「細雪」谷崎潤一郎

細雪 器量好みなどと云うことは、得てそう云う堅人によくあるものだが、その人も巴里を見て来た反動でか、奥さんは純日本式の美人に限る、洋服なんか似合わなくてもよい、しとやかで、大人しくて、姿がよくて、和服の着こなしが上手で、顔立も勿論だけれども...
テンプレート

ラベンダーのペーパータグ用テンプレート

紙工作ぺんのYouTube動画用テンプレートです。 ペーパークイリングで作ったラベンダーのペーパータグ(紙タグ・ギフトタグ)を作製した際に使用した台紙です。
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「仏教人生読本」岡本かの子

仏教人生読本 悲観も突き詰めて行って、この上悲観のしようもなくなると楽観に代ります。今まで泣き沈んでいた女が気が狂ったのでなく静かに笑い出すときがそれであります。さればとて捨鉢の笑いでもありません。訊いてみると、「ただ何となく」といいます。...
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