第一には容易に腹を立てないこと、第二には他人をうらやまないこと、第三には時とものとをむだにしないように働くこと。この三ヵ条を忘れなければ、誰でもかならず福々しい身の上になることができます。
羽仁もと子の「女中訓」の冒頭部分です。
「女中訓」ということだったので、今風に言うならば家政婦さんとかメイドさんに向けてのマニュアル的な内容かな、と思ったら……。
全然違いました。
この作品で言うところの女中は、どうやら家庭の主婦(あるいはそれに準ずる人)のことのようで、主婦の心得的なことがあれこれ書かれています。
専業主婦となって1ミリの隙もなく家庭を管理・運営したい!
と考えている人にとっては、今の時代でも参考になることがたくさんあるかもしれません。
ですが、どうにかして少しでも楽をしよう、と考えている私のような人間にとっては耳の痛い話ばかりで、参考になるどころかフラストレーションが溜まります(苦笑)
こんなすごいことを言ってのける人は、いったいどんな人なんだろう。
そう思って羽仁もと子さんの経歴をwikipediaでチェックしてみたら
『日本における女性初のジャーナリスト。また、自由学園および婦人之友社の創立者。家計簿の考案者としても知られている。』
とのことでした。
家計簿の考案者って……。
何度挑戦しても一度たりとも続けることのできなかったあの家計簿。
「あぁ、私ってば家計簿も付けられないような人間だったのね」と私を自信喪失の淵にまで連れていったあの家計簿。
そりゃあ、羽仁もと子の文章は、私には辛すぎるはずです。
なんとなく。
本当になんとなくですが。
高校の時の家庭科の先生が羽仁さん的な思考をしていたな、とふと思い出しました。
はい、そうです。
その家庭科の先生も苦手でした。何もかもが立派すぎたんですね。
そんな私でも「女中訓」の
腹を立てない
うらやまない
時とものとをむだにしない
くらいなら、なんとかできるかもしれないような気がしないでもない……。
というわけで、ガラスペンと万年筆用インクを使って書いてみました。よろしければ皆様もぜひ。