陰翳礼賛
今に文明が一段と進んだら、交通機関は空中や地下へ移って町の路面は一と昔前の静かさに復ると云う説もあるが、いずれその時分にはまた新しい老人いじめの設備が生れることは分りきっている。結局年寄りは引っ込んでいろと云うことになるので、自分の家にちゞこまって手料理を肴に晩酌を傾けながら、ラジオでも聞いているより外に所在がなくなる。


この文章のポイント
こういう文章を読んでいると、タイムカプセルの答え合わせをしているような気分になります。
文明が進んで、確かに交通は空中(飛行機?)や地下へ移りましたが、地上の交通もそのまま発展し続けましたから「一と昔前の静かさに復ると云う説」は現実のものにはなりませんでしたね。
谷崎潤一郎をもってしても「老人いじめ」と言っていることも驚きでした。